空き家の放置、ちょっと待った!
2023年12月28日
空き家の放置、ちょっと待った!
-税金増と法的責任でダブル苦-
はじめに:空き家問題の現状
日本の不動産市場では、空き家問題が深刻化しています。経済的、社会的な変化に伴い、空き家の数は増加の一途をたどっています。総務省の調査によると、2023年時点で空き家の数は約849万戸に達しており、これは全住宅の13.6%に相当します。これが様々な社会問題を引き起こしている現状を踏まえ、空き家の所有者が知っておくべきポイントを解説します。
[空き家の増加と社会的背景]
少子高齢化による人口減少、都市部への人口集中などの社会的背景により、特に地方では空き家が急増しています。また、相続などで空き家を抱えるケースも多く見受けられます。これらの空き家は、不動産市場において大きな問題となっており、対策が求められています。
[放置される空き家のリスク概観]
放置された空き家には、多くのリスクが潜んでいます。犯罪の温床や火災のリスク増加、さらには地域の景観悪化や不動産価値の低下など、経済的・社会的な問題を引き起こすことがあります。これらのリスクを避けるためにも、空き家の適切な管理や売却が重要となってくるのです。
1章 そもそも空き家とは何か-定義と認識-
空き家問題は、現代日本の不動産市場において重要なテーマの一つです。しかし、多くの方が「空き家」という言葉の正確な意味や、それがなぜ問題視されるのかを十分に理解していないのが現状です。ここでは、空き家の基本的な定義とその問題点を明確にしていきます。
1.1 空き家の法的な定義
法律上、「空家等」とは、
【建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又 は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。《空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第1項》】
と定義されています。
この定義の目安として、1年以上使用や居住がなされていない(又は人の出入りがない)ことが示されています。これは人の出入りはもちろん、電気、ガス、水道といったライフラインの利用状況や、居住や使用に適さない家屋(壁の倒壊や窓の破損等)であるか、など総合的に判断されます。
1.2 なぜ空き家が問題視されるのか
空き家が問題視される理由は多岐にわたります。第一に、放置された空き家は街並みを損ない、地域の価値を下げる可能性があります。さらに、空き家は、不法侵入や放火などの犯罪につながる可能性があるだけでなく、火災などの安全リスクを高め、周辺住民の生命や財産に危害を及ぼす恐れもあります。これらの問題を解決するためには、適切な管理や売却が求められるのです。
2章 空家対策特別措置法の解説
日本政府は空き家問題に対処するため、「空家等対策の推進に関する特別措置法※」を制定しました。この法律は、放置された空き家による問題を緩和し、安全で快適な住環境を確保することを目的としています。ここでは、この法律の概要、所有者に課される義務、および法律の適用例とその影響について解説します。
※通称「空家対策特別措置法」や「空家法」「空家特措法」と呼ばれる。
2.1 法律の概要と目的
空家対策特別措置法は、2015年に施行された法律です。この法律の主な目的は、空き家による問題(例えば、倒壊や景観の損ない、近隣住民への迷惑)を防止し、適切な管理や利用を促進することです。具体的には、放置された空き家が地域社会に与える悪影響を最小限に抑えるための枠組みと言えます。
その為、現在所有している物件が[1.1 空き家の法的な定義]に該当し、「特定空き家」に認定されると、所有者には法律に基づく一連の義務と規制が適用されます。これには、建物の安全確保や適切な維持・管理が含まれ、所有者はこれらの責任を果たさなければなりません。
2.2 所有者に課される義務と規制
空家対策特別措置法により、空き家の所有者は建物の安全確保と適切な維持・管理を行うことが義務付けられています。この義務には、建物の崩壊防止や不衛生な状態を防ぐことが含まれます。さらに、行政からの指導や命令に従うことも求められ、これを怠れば罰則が科せられる可能性があります。このように所有者に課される義務は、空き家が地域社会や環境に悪影響を及ぼさないようにするための重要な措置です。
2.3 法律の適用例と影響
実際にこの法律が適用される場合、地方自治体は空き家を特定し、その状況に応じて所有者に改善措置を命じることができます。この法律の適用により、多くの所有者は空き家の適切な管理や売却に積極的に取り組んでいます。これにより、空き家問題の解決に向けた重要な一歩が踏み出されており、より良い地域社会の実現に寄与しています。
この章で空き家所有者に課せられる義務と規制について解説しましたが、それでは実際に所有者にどのような負担がのしかかってくるのか?次の第3章では、空き家を所有することに伴う税金の増加について詳しく掘り下げ、第4章では空き家の所有者が直面する可能性のある法的リスクに焦点を当てて解説します。
3章 税金の増加 -空き家の経済的負担-
空き家の所有者にとって、税金は避けて通れない大きな経済的負担です。放置された空き家は、所有者に予想以上の税金を課すことがあります。この章では、空き家に関連する税金の種類、放置による税金の増加、そして税金の計算方法について解説します。
3.1 空き家に関連する税金の種類
空き家の所有者が支払うべき主な税金には、固定資産税と都市計画税があります。固定資産税は、土地や建物の評価額に基づいて課せられる税金で、都市計画税は、都市計画区域内の住宅用地や事業用地など、特定の用途の土地や建物に適用され、地域の開発や整備を支援するために用いられます。
3.2 空き家を放置することで増える税金の詳細
空き家を放置することで、税金が増加する可能性があります。特に、空き家が適切に管理されていないと、固定資産税の軽減措置が適用されないことがあります。また、放置された空き家が行政から危険建物とみなされた場合も、固定資産税がの軽減措置が適用されないことがあります。
3.3 税金増加の具体例と計算方法
通常、空き家ではない住宅に対しては、固定資産税の軽減措置として最大6分の1減額されることがあります。例として、土地10,000,000円と建物5,000,000円の評価額の物件を考えましょう。年間の固定資産税は以下のように計算されます
・土地の固定資産税:10,000,000円 × 1/6 × 1.4% = 23,300円
・建物の固定資産税:5,000,000円× 1/6 × 1.4% = 11,650円
・合計:約23,300円 + 約11,650円 = 約34,950円
しかし、空き家が長期間放置され、行政から危険と判断される場合、軽減措置が適用されず、通常の税率が適用されます。この場合、税金は以下のように増加します:
・土地の固定資産税:10,000,000円 × 1.4% = 140,000円
・建物の固定資産税:5,000,000円 × 1.4% = 70,000円
・合計:140,000円 + 70,000円 = 210,000円
この例から、空き家を適切に管理しないことによる固定資産税の増加がいかに大きいかがわかります。軽減措置が適用される場合とされない場合とで、支払う税金に大きな差が生じるため、空き家の管理は所有者にとって経済的にも重要な意味を持ちます。
なお、税金の計算方法は複雑であり、専門的な知識が必要です。正確な計算には専門家の助言を求めることを推奨します。(本来の固定資産税計算には面積も関係してきますが今回は割愛しております)
*2023年12月13日より施行された空家等対策の推進に関する特別措置法の一部改正により、「特定空き家」に指定されなくても、その前段階である「管理不全空き家」に指定されると、固定資産税が6倍になります。(固定資産税の軽減措置が適用されなくなります)
4章 法的責任 -所有者が直面するリスク-
空き家の所有者は、単に物理的な建物を所有しているだけではありません。様々な法的責任を負い、それによるリスクが存在します。そのため、空き家所有者の方は、空き家に関する法的責任を理解し、適切な対応をとることが非常に重要になっています。この章では、空き家に関する法的な問題、事故や不法侵入時の責任、そしてそれらが及ぼす経済的・社会的影響について詳しく解説します。
4.1 空き家の法的な問題とは何か
空き家の法的な問題は、主に建物の安全性や環境への影響に関連しています。具体的には、建物が崩壊の危険性を持つ場合、また衛生面で近隣に悪影響を及ぼす場合、所有者は行政から改善命令を受けることがあります。これらの問題は、放置すればするほど深刻化し、法的措置を取られるリスクが高まります。
具体的には、建物が倒壊したり、ゴミや異臭が漏れ出して近隣の住民に迷惑をかけたり、不法侵入者が侵入し、周囲に危険を及ぼしたりする可能性があります。
4.2 事故や不法侵入による法的な責任
空き家で事故が発生した場合、所有者は、民法上の土地工作物責任に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。この責任は、土地や工作物が他人に損害を与えた場合、その所有者や占有者が損害賠償責任を負うという責任です。
例えば、空き家が倒壊し、通行人や隣家を巻き込んだ場合、所有者は損害賠償責任を負う可能性があります。また、空き家からゴミや異臭が漏れ出し、近隣の住民に迷惑をかけた場合、所有者は行政から改善命令を受ける可能性があります。さらに、空き家で不法侵入者が怪我をした場合でも、所有者に過失があると判断されれば、賠償責任を負う可能性があります。不法侵入者が怪我をした場合の責任については、所有者に過失がなければ責任を負わないという判例もありますが、不法侵入者が通行人や隣家を巻き込んだ場合や、不法侵入者が建物の構造を変更したことで事故が発生した場合など、所有者に過失があると判断される可能性もあります。
4.3 法的問題による経済的・社会的な影響
法的措置が必要な事態に至った場合、その処理には多額の費用が発生することがあります。また、近隣住民とのトラブルや、地域社会からの信用の失墜など、社会的な影響も大きくなります。さらに、長期的に見れば不動産価値にも悪影響を与える可能性があります。
例えば、空き家が倒壊した場合、近隣の住民の住宅や財産に損害を与えた場合には、その損害を賠償する必要があります。また、行政から改善命令を受けた場合、その命令に従うための費用が発生します。さらに、空き家が周辺環境に悪影響を及ぼしている場合、近隣住民とのトラブルに発展する可能性があります。
これらの法的責任や社会的な影響は、空き家所有者にとって大きな負担となります。そのため、空き家を所有する際には、これらのリスクを十分に理解し、適切な対応をとることが重要です。
5章 空き家の適切な管理と対策
空き家の所有者にとって、適切な管理と対策は重要な課題です。放置された空き家は、安全リスクや経済的価値の低下を引き起こす可能性があります。ここでは、定期的なメンテナンスの重要性、安全対策、および地域や行政との連携方法について説明します。
5.1 定期的なメンテナンスの重要性
空き家の定期的なメンテナンスは、建物の劣化を防ぎ、安全を保つために不可欠です。屋根や外壁の塗装、雨漏りの修理、排水管の清掃など、建物の劣化や損傷を防ぐためのメンテナンスが重要です。また、害虫や雑草の駆除なども忘れずに行う必要があります。
具体的には、以下のようなメンテナンスが考えられます。
・屋根や外壁の塗装:雨漏りや腐食を防ぐ
・雨漏りの修理:雨漏りを放置すると、建物の劣化や損傷につながる
・排水管の清掃:排水管が詰まると、水漏れや異臭の原因となる
・害虫や雑草の駆除:害虫や雑草は建物の劣化や不法侵入の原因となる
5.2 空き家を安全に保つための対策
空き家の安全を保つためには、適切な防犯対策や防火対策を行うことが重要です。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
・窓やドアの鍵の交換や防犯フィルムの貼り付け:不法侵入を防ぐ
・防犯カメラやセンサーライトの設置:不法侵入を監視する
・火災警報器の設置:火災を早期に発見する
・定期的な電気設備の点検:電気設備の故障や漏電を防ぐ
5.3 地域や行政との連携方法
地域のコミュニティーや行政との連携は、空き家問題の解決において非常に効果的です。地域の防犯活動に参加したり、空き家の情報を行政に提供することで、安全な住環境を維持する支援を得ることができます。また、空き家の管理や活用に関する助言を行政から受けることも可能です。また空き家の情報を行政に提供する際には、空き家の所在地や建物の状況、所有者の連絡先などを記載した情報をまとめておくと非常に便利です。
6章 空き家の売却 -解決策としてのアプローチ-
空き家を所有するということは、税金やメンテナンスの負担、さらには法的責任や安全上の問題など、さまざまなリスクを伴います。これらのリスクを回避し、空き家問題を解決するためには、売却という選択肢も検討すべきでしょう。
この章では、空き家を売却する際のメリット、売却プロセスとその注意点、そして不動産専門家との協力方法について解説します。
6.1 空き家を売却するメリット
空き家を売却することで、以下のようなメリットがあります。
・税金やメンテナンス費用などの経済的負担を軽減できる
・法的責任を問われる可能性や、不法侵入や放火などの事故のリスクから解放される
・売却により得られた資金を他の投資や活動に充てることが可能となる
6.2 売却プロセスと注意点
空き家を売却する際には、以下のプロセスと注意点があります。
(1)相談
(2)査定
(3)媒介契約
(4)販売活動
(5)交渉・契約
(6)決済・引渡し
(7)確定申告
注意点
・不動産の状態を正確に把握し、適切な価格設定をする
・契約の細部に注意し、法的なトラブルを避ける
・不動産専門家と協力する
売却については【不動産売却の流れ】で詳しく解説しております。
気になる方はそちらもご覧ください。
6.3 不動産専門家との協力方法
不動産専門家と協力することで、売却プロセスがスムーズかつ効果的に進む可能性が高まります。専門家は、以下のサポートをしてくれます。
・市場動向の分析や価格設定などの専門的な知識やノウハウを活かし、売却プロセスをスムーズかつ効果的に進めるためのサポート
・契約書類の準備や交渉など、法的トラブルを避けるためのサポート
空き家を売却するかどうかは、所有者の方のご判断となります。しかし、空き家を所有する際には、さまざまなリスクを伴うことを理解した上で、慎重に検討することが大切です。
7章 空き家放置のリスクを回避するために
空き家の問題は、個々の所有者だけでなく、地域社会全体に影響を及ぼす重要な課題です。適切な管理や売却を通じて、これらのリスクを最小限に抑えることが可能です。ここでは、空き家問題の解決に向けた総括と、所有者としての次のステップについて考察します。
7.1 空き家問題の解決に向けた総括
空き家の放置は、税金の増加、法的責任、安全上の問題など、多くのリスクを生み出します。これらのリスクを避けるためには、以下のような対策を講じることが重要です。
・空き家を適切に管理し、劣化を防ぐ
・不法侵入や放火などの事故を防止するための対策を行う
・必要に応じて、空き家を売却する
空き家問題は、所有者の積極的な対応を必要とすると同時に、地域社会や行政との連携も求められます。
7.2 所有者としての次のステップ
空き家の所有者としては、まずは現在の状況を正確に把握し、必要な対策を講じることが求められます。具体的には、以下のような点を確認しましょう。
・空き家の所在地や建物の状況
・所有者の権利関係
・空き家に関する法律や条例
また、空き家に関する税金負担についても、把握しておくことが重要です。
空き家を売却を検討される場合は、市場価格の調査や不動産専門家との協力を通じて、最適な売却戦略を立てることが望ましいです。
まとめ
最後にまとめると
空き家を放置すると、以下のリスクが生じます。
・税金の増加
・法的責任の問われうる
・不法侵入や放火などの事故のリスク
・景観や環境の悪化
空き家を所有している方は、まずは現在の状況を正確に把握し、必要な対策を講じることが大切です。
具体的には、以下のような点を確認しましょう。
・空き家の所在地や建物の状況
・所有者の権利関係
・空き家に関する法律や条例
また、空き家に関する税金負担についても、把握しておくことが重要です。
空き家を売却することで、以下のメリットがあります。
・税金やメンテナンス費用などの経済的負担を軽減できる
・法的責任を問われる可能性や、不法侵入や放火などの事故のリスクから解放される
・売却により得られた資金を他の投資や活動に充てることが可能となる
空き家の問題は、単に放置すれば解決するものではありません。所有者の積極的な行動が必要であり、
その過程で専門的なサポートを受けることが成功への鍵となります。
空き家売却や管理に関するさらなる情報やサポートが必要な場合は、株式会社LIQまで是非ともご相談ください。
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